<海を望む> うちかど助産院 Uchikado Midwifery Home

  • 新築                new build
  • 2016年
  • 岡山県倉敷市    kurashiki JAPAN
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  • 助産院             midwifery home

目の前に瀬戸内の穏やかな海が拡がり、その視線の先には四国の山々の連なりを望むことができる海辺の敷地。製塩業で栄えた倉敷市児島の塩田跡地に、海を望む助産院の設計を頂いた。

産婦人科での分娩が主流となり、助産院という名称さえ聞く機会もほとんどなくなってきているが、施主である助産師さんから話を伺う毎に、産前産後を含め妊婦さんを手厚くサポートする助産院の社会的役割が高まっている事を実感させられる。

当助産院は、大病院とサポート関係を結び、市の保健局と連携することによって、既存のサービスでは賄いきれない多岐に渡る細やかなケアを、小さな地域単位において着実に実践している。より充実した地域貢献を高めるため、敷地北側に隣接する自宅兼仕事場の別棟という形で、新たに海側に新棟を作ることとなった。

オーナーからの主要な要望は、海への眺望を多く確保すること、木を中心とした落ち着いた内装、一番眺めのよい場所に浴室を設置などで、あとは私に任せる方針となった。

全体構成は、切妻屋根の東側二層部分と、入所室と分娩室がある西側平屋部分に大別し、東側を外来とスタッフエリア、西側を入院エリアとしている。単純な屋根形状の採用と軒の張り出しによって、堅実に雨水から建物を守る事を心掛けた。

建物を東西に分ける壁を南北方向に張り出すことによって、比較的動きのある東側と、静寂さが必要となる西側とを視覚的に切り離している。張り出した袖壁端部は風雨による劣化が容易に予想されるので、雨掛りを板金で包むことにより合理的な木部保護としつつ、海に呼応した表現として板金で曲線を描いた。降雨時に、実際の雨掛かりラインと曲線ラインを見比べてみると、うまく板金部のみが雨に打たれているのを確認できる。

また袖壁の板金部も含め建物の随所に見られる大工をはじめ各職工の丁寧な手仕事を感じてもらうことによって、オーナーである助産師さんの仕事の丁寧さ・きめ細かさ・優しさ、そして温かな人柄を表現出来ればと考えた。人柄がダイレクトに仕事内容と評判に反映される助産師という職業においては、その人柄を建築全体で表現する必要があると考える。真っ白モダンでクールな建築であったとしたらどうだろう。もちろん助産師さんの人柄とは程遠いし、くつろぎを求めてやってくる妊婦さんにとっては全く安らぎのない空間となっていただろう。

自ずと仕上げ材は、温もりの感じられる自然素材が中心となった。外装は主に木下見板張り、内装は柔らかな杉材を多用した木板張りと漆喰塗とし、自然素材による高い調湿効果と木の香りに包まれた落ち着きのある雰囲気に仕上げている。

内部ホール部分を外装と同じ木下見板張りとし、また内部垂木と外部垂木を連続させ、内外が連続的に延長していくように表現している。各部屋から海への眺望を可能な限り確保し、さらに西側を平屋とすることにより、北側に隣接する自宅兼仕事場の二階から海への眺望も同時に確保できるようにしている。また、平屋部分中央上部を凹型とすることで、ハイサイド窓を通して南北両側の部屋へ採光と通風ができるように計画している。


水路対岸から望む。助産院は海を向き、遠く瀬戸大橋や四国が広がる。

水路越しに助産院をみる。水面の輝きに呼応させた形で屋根板金色を選ぶ。

海側ファサード。大きな開口部が並び、どの部屋からも海の絶景を望むことができるようにしている。

2階右端は海を望む浴室となっている。

玄関側北側ファサード。右端ストライプ状の駐車エリア。

スロープを登ると入口となる。

スロープ上部には軒を大きく張出し、来客者を迎え入れる大屋根となっている。

エントランス。スロープ面は粗面としすべり止めとしている。

中央に張り出した袖壁がアイストップとなり、手前と奥とを緩やかに分けている。

アプローチ正面から見ると袖壁と、袖壁の板金意匠によって、玄関位置を暗示している。

手前左端の市松状の木板部には、設備機器類が隠されている。

木で覆われた内部空間。正面の窓からは瀬戸内海が目前に広がる。

内部壁は外部壁と同じ下見板張り。

受付カウンター。

木板と漆喰が柔らかく光を反射している。

内部は共用トイレ。

2色の漆喰の塗り分けを、細く突き出た建具の戸当りで納める。

様々な素材が見え隠れしている。

横桟付きのガラス建具。

受付から分娩室側をみる。

分娩室から玄関側を覗くことのできる小窓がある。

右手の廊下上部のハイサイドライトから光が差し込んでいる。

杉板で覆われた空間。

木の香りが室内を包む。

杉板のベンチ。中央に向かって少し傾斜を付けて、座りやすい形状にしている。

壁の木板は、鋸引き仕上げとし、素材感を出している。

ホール。いつもお母さんと赤ちゃんが集まるところ。

ここはいつも賑わう場所です。

ホール天井の見上げ。垂木の連続が外まで続きていきます。

左上の障子の見える部屋は、マッサージを施術する部屋になっています。

ホールから2階に上がる階段をみる。

ホールに集まるお母さん達は、この視点で部屋を見るのが多い。

キッチンにはスタッフが立ち、料理をしながらお客さんと話をしている。

手すり壁のディテール。

廊下から玄関側をみる。

手前の引き戸は壁内に収納できるようにしている。

玄関見返し。救急搬送の台車やベビーカーの使用を想定し、玄関土間とフロアはフラットにしている。

素材の違いのみで靴脱ぎ場を示す。

宿泊室と分娩室に向かう際に通る廊下。

建物中央部で暗くなりがちな場所であるが、ハイサイドライトによって北側にも光が落ちるようにしている。

壁仕上げは全て杉板。建具も同様の仕上げに揃えている。

廊下上部のハイサイドライト。

廊下と分娩室へ光を導く。

同じく廊下上部の様子。

右手が分娩室で、ガラス戸を通して分娩室内に光を通す。

宿泊室内をみる。

漆喰壁に反射する光によって、左官仕上げの手仕事感が伝わってくる。

畳敷き部分は一段高くしている。

宿泊室の畳敷き。窓の外には海が広がる。

窓辺にはカウンター天板を設え、また足元を掘り込み、足を下ろすことができるようになっている。

襖の左手には3連の障子を収納しており、必要に応じて宿泊室内を間仕切ることができる。

宿泊室内洗面台。洗面台右手には片持ちのベンチ。

さらにその右手に廊下との間の型板ガラスを嵌めており、廊下の様子・室内の様子が互いにそれとなく感じられるようになっている。

もう一つの宿泊室。

一段高くなった左手畳敷きが分娩室。

畳の上に布団をひき、光量を調整された薄暗い中でお産をします。

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岡山を拠点に活動する建築家・梶野竜二による一級建築士の設計事務所の案内。建築家による土地探し相談から上質な注文住宅・別荘の設計、店舗設計、病院設計等。シンプルデザインですっきりとした和風モダン。岡山・倉敷・牛窓等瀬戸内の自然や敷地の特徴を捉えた配置計画。積極的に無垢木材や自然素材を利用。料理好きの建築家によるこだわりのキッチン収納やパントリー、使い勝手の良い家事動線の設計。家の中に物があふれないような収納計画。大きな玄関土間空間で半屋外活動。デザイン性の高い外観。木と漆喰の家。