<岡山の自邸+アトリエ>

  • 岡山の自邸+アトリエ
  • 2025年
  • 岡山市
  • 住宅

<ARCHITECT'S OWN HOUSE>

  • ARCHITECT'S OWN HOUSE
  • 2025
  • Okayama-city
  • Residence

建築の設計に携わる多くの人は、将来自分の家を自身の手で設計する事を夢見るのではと勝手に想像する。私もその一人で、いつの日か自分の家を設計したいと願っていたが、身の回りの種々の条件が整い、遂に自邸を設計する日がやってきた。さて、どんな家を設計しようか。人は単純なもので、子供の時に見てきた身近な建物や空間・素材、時には印象的だった建築のイメージなどが重なり合い、それらの記憶の積み重ねに導かれて自邸が出来上がっていった。毎日の登下校で見てきた焼杉に瓦屋根の素朴な民家。図工の授業や夏休みの宿題で絵を描いた禅宗の寺。親に連れられて見て回った城や黒壁の町家。昔の記憶によってすり込まれた美意識に現代的な工夫を施すことで、古くも新しい外観の自邸となった。

自邸の内部は一時期同居した祖父母の家の影響を受けている。深い軒に守られた室内は常に暗がりが支配し、暗がりの中から見る庭の緑は特に美しく印象的だった。自邸においても開口を絞って落ち着きと暗がりのある空間とし、庭の緑を美しく眺めることができるように設計した。現在は3人暮らしであるが、将来的なライフステージにおいて、2人や1人暮らしであっても寂しさを感じないようなコンパクトなサイズ感であり、高齢になっても1階のみで生活が完結できる回遊性のあるプランニングとした。

自邸というとついホームランを打ちたくなる気持ちが高まるかもしれないが、信頼を寄せる工務店と二人三脚で地味に地道に細かな納まりや配慮を積み重ね、日々の生活にストレスがなく長年家族が愛し使い続けることが出来る確かな住宅が出来上がったと思う。

I imagine that many people involved in architectural design dream of one day designing their own home. I was one of those people, and I always hoped to design my own home. Finally, various circumstances around me led to the day when I could design my own home. So, what kind of home should I design? People are simple creatures. The familiar buildings, spaces, and materials I saw as a child, along with sometimes impressive architectural images, all overlapped, and my home was created guided by these accumulated memories. The simple houses with charred cedar and tiled roofs I saw every day on my way to and from school. The Zen Buddhist temples I drew pictures of in art class and for summer homework. The castles and black-walled townhouses my parents took me to see. By incorporating modern touches into the aesthetic sense instilled in me by my old memories, my home has a new, yet ancient, appearance. The interior of my home is influenced by the house of my grandparents, with whom I once lived. The interior, protected by deep eaves, was always shrouded in darkness, and the greenery of the garden, seen from within the darkness, was particularly beautiful and impressive. Even in their own home, they narrowed the openings to create a calm, dark space, allowing for beautiful views of the greenery in the garden. Currently, three people live in the home, but the house is compact enough that they won't feel lonely even if they live alone or with just two people in the future, and the planning allows for easy movement so that even in older age they can live entirely on the first floor. When you think of building your own home, you might be tempted to hit a home run, but by working closely with a trusted builder and steadily paying attention to the small details and details, I believe they have created a reliable home that will make daily life stress-free and that the family can love and use for many years to come.


南側外観。騒音や交通量の多い南側は閉鎖的なつくりとし、北西側に対して開いたつくりとしている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

南側外観。騒音や交通量の多い南側は閉鎖的なつくりとし、北西側に対して開いたつくりとしている。

外構床は白御影石張り。縦のみ目地を広げてダイカンドラの緑をみせている。背後の山の緑と庭木が連続していく。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

外構床は白御影石張り。縦のみ目地を広げてダイカンドラの緑をみせている。背後の山の緑と庭木が連続していく。

瓦屋根に焼杉。この地域で昔から使われてきた素材を使いつつ、現代的な納まりにすることで古くも新しい住宅としている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

瓦屋根に焼杉。この地域で昔から使われてきた素材を使いつつ、現代的な納まりにすることで古くも新しい住宅としている。

玄関へのアプローチ。3層の屋根が重なりあうように続いている。近年の豪雨や日射に対応し玄関前に大きな屋根を架けている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

玄関へのアプローチ。3層の屋根が重なりあうように続いている。近年の豪雨や日射に対応し玄関前に大きな屋根を架けている。

北西角の庭から住宅を眺める。庭に面してテラスを配置している。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

北西角の庭から住宅を眺める。庭に面してテラスを配置している。

庭に面したテラスは奥まった位置にあり、交通量の多い道路側からは見えない落ち着きのある場所となるようにした。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

庭に面したテラスは奥まった位置にあり、交通量の多い道路側からは見えない落ち着きのある場所となるようにした。

吹抜のダイニングの先には、天井高さを抑えたリビングが続いている。ほぼ全ての部屋がダイニングの吹抜に面している。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

吹抜のダイニングの先には、天井高さを抑えたリビングが続いている。ほぼ全ての部屋がダイニングの吹抜に面している。

吹抜のダイニングの横にはカウンターを設えたキッチンを配置。さらにキッチンの奥にはテラスがある。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

吹抜のダイニングの横にはカウンターを設えたキッチンを配置。さらにキッチンの奥にはテラスをつくった。

北西角の庭に面して大きなキッチン窓があり、気持ちの良い光が室内を満たしている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

北西角の庭に面して大きなキッチンの窓があり、気持ちの良い光が漆喰の壁を照らしながら室内を満たしている。

籐巻きの柱越しにリビングを見る。吹抜のダイニングとは、アイランド家具を介して緩やかに隔てている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

籐巻きの柱越しにリビングを見る。吹抜のダイニングとは、アイランド家具を介して緩やかに隔てている。

吹抜のダイニングの一角にグランドピアノを配置。ちょっとしたコンサートもできる空間としている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

吹抜のダイニングの一角にグランドピアノを配置。ちょっとしたコンサートもできる空間としている。

2階から見下ろした様子。ピアノの床から玄関まではレンガタイル仕上げ。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

2階から見下ろした様子。ピアノの床から玄関まではレンガタイル仕上げ。

一体的なLDK空間であるが、それぞれカウンターやアイランド家具によって緩やかに分けている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

一体的なLDK空間であるが、それぞれカウンターやアイランド家具によって緩やかに分けている。

リビングからテラスを通して庭を眺める。造作のソファ・本棚と木製建具で一体感をつくっている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

リビングからテラスを通して庭を眺める。造作のソファ・本棚と木製建具で一体感をつくった。

南の交通量の多い道路側は閉鎖的につくり、北西角の庭方向へは開放的につくっている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

南の交通量の多い道路側は閉鎖的につくり、北西角の庭方向へは開放的につくっている。

室内からは北西角の庭の緑がきれいに見えている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

室内から北西角の庭の緑がきれいに見えるように設計した。

キッチン横にテラスを設けることで、テラスでの飲食など使用頻度が高まるようにしている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

キッチン横にテラスを設けることで、テラスでの飲食など使用頻度が高まるように計画した。

リビングの造作家具の詳細。所作にあわせて照明やスイッチ位置まで細かく配慮している。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

リビングの造作家具の詳細。所作にあわせて照明やスイッチ位置まで細かく配慮している。

リビング奥には主寝室があり、一階のみで生活が完結できるような平面計画としている。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

リビング奥には主寝室があり、一階のみで生活が完結できるような平面計画としている。

雑木の庭越しにテラスを見た様子。造園家と意見を出し合いながら共に植栽設計を行った。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

雑木の庭越しにテラスを見た様子。造園家と意見を出し合いながら共に造園計画を行った。

小さな庭であるが、隣家の緑と連続させながら、奥行きの感じられる雑木の庭とした。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

小さな庭であるが、隣家の緑と連続させながら、奥行きの感じられる雑木の庭とした。

瓦屋根と焼杉。この地方の伝統的な美意識を継承できたらと考えた。
Photo:MALUBISHI ARCHITECTS

瓦屋根と焼杉。この地方の伝統的な美意識を継承できたらと考えた。